― 「財政再建と、市民サービスの質の両立」という一本の線

3月定例会で審議された51件の議案は、一見ばらばらに見えます。けれど、副議長として、また市の財政を見つめてきた一人の議員として、私は、この51件が「厳しい財政の中で、市民サービスの質をどう守り、次の世代へつなぐか」というひとつの問いで貫かれていると考えています。主な議案を、四つの視点から読み解きます。


視点1 持続可能性が問われる

市立病院 ― 「質の向上」と「経営の持続」の両立

市立病院の来年度予算には、医療の充実が並びます。産婦人科の入院診療の再開、手術支援ロボット「ダビンチ」による手術、1日あたり入院患者306人を目標とする受け入れ拡大、そして国指定のがん診療連携拠点病院を目指す取り組み(現在は県指定)。さらに、築約40年の現病院に代わる新病院が、令和13(2031)年度の開院を目指して動き出します(来年度から設計に着手)。

しかし同時に見落としてはならないのが、来年度の収支が約2.6億円のマイナスだという事実です。医療の質を高めることと、経営を持続させること。この二つは、どちらかを選べばよいというものではありません。新病院という大型投資を前に、「質の向上」と「経営の持続」をどう両立させるか――それが問われています。

水道・下水道 ― 避けられない料金改定の議論

水道・下水道は、暮らしを支える最も基本的なインフラです。その経営が、構造的に厳しくなっています。水道は「水を売るほど赤字になる」、下水道は「資金が枯渇しかねない」と説明されました。料金のあり方を含め、持続可能な経営を審議会に諮る段階に入っています。料金改定は、避けて通れない議論になるでしょう。

ここに、二つの将来課題が重なります。一つは安全。飲み水のPFAS(PFOS・PFOA)が令和8年4月から国の正式な水質基準となり、市は新基準に対応するため、毎月1回の検査を行いたいとしています(検査機器は令和8年12月末までに導入予定)。もう一つは老朽化。施設の更新を民間の力も借りて進める「官民連携(ウォーターPPP)」の導入にあたり、市は地元事業者が参入できる仕組みを模索しています。いずれも「避けられない将来負担に、組織としてどう備えるか」という問いです。

視点2 予防という発想

こども誰でも通園制度 ― 「孤立育児の予防」

私が一貫して必要だと訴えてきたのが、問題が深刻化する前に手を打つ「予防」の発想です。来年度に基準が定められた「こども誰でも通園制度」は、その思想に通じます。これは全国制度で、就労の有無を問わず、0歳6か月から満3歳未満の子どもを毎月10時間まで(国の補助基準)預けられる仕組みです。

この制度の本質は、単なる預け先の拡大ではありません。家庭が抱え込みがちな育児の不安や孤立を、早い段階でやわらげる――いわば「孤立育児の予防」です。宝塚市では認可した5園が左岸側に偏る課題があり、市は地域の偏りも考慮しながら整備するとしています。制度を「ただ作る」のではなく、必要な人に届く形にできるかが要です。

孫の育児休暇 ― 構造に手を当てる発想

市職員の休暇制度を、子だけでなく「孫の育児」まで対象に広げ、介護休暇を最大3年に拡大する条例改正も可決されました。全国的にも珍しい取り組みです。市は、60歳以上の労働力の確保と、祖父母世代が子育てを支える形づくりを理由に挙げています。

これも、人口構造の変化に組織の制度を合わせていく動きと読めます。高齢化と人手不足が進む中で、世代をまたいだ支え合いの仕組みを先回りして整える。対症療法ではなく、構造に手を当てる発想です。(これは市職員の制度であり、市民全体の制度ではありません。)

視点3 聖域を設けない ― 議員定数

財政再建を進めるなら、議会自身のあり方も例外ではありません。今回、議員定数を改正する議員提出議案が出され、賛成と反対が同数となり、議長の裁決により継続審査――結論の先送りとなりました。宝塚市議会の定数は現在26人で、人口規模の似た都市の中で最も少ない人数です。財政再建団体に陥った歴史の中で、これまで定数を減らしてきた経緯があります。

私は、この継続審査に反対の立場を取りました。これは改正案そのものへの賛否ではなく、「結論を先送りすることの可否」への一票です。議会が自らのあり方を問うテーマだからこそ、先送りにせず、根拠を持って議論を尽くすべきだと考えています。

視点4 市民との協働 ― 声を、国へ

最後に、議会のもう一つの役割です。今回、保育士の配置基準の早期完全実施とさらなる改善を国に求める請願が全員一致で趣旨採択され、各自治体の減額免除制度への国の支援を求める意見書も全員一致で可決・送付されました。配置基準は2024年に76年ぶりに見直されたものの、経過措置によって完全実施には至っていません。

市の財政だけでは解決できない課題は、国の制度に働きかける必要があります。市民の声を起点に、議会が国へ声を届ける――これもまた、市民との協働のかたちです。

可決の先を、点検し続けます

六つのテーマに通底するのは、「限られた財源の中で、何を守り、何を変え、どう次の世代へつなぐか」という一つの問いです。大型投資の持続可能性、予防への転換、聖域を設けない姿勢、市民との協働――これらは別々の議案でありながら、同じ方向を向いています。

議案が可決されたことは、ゴールではありません。決めたとおりに進んでいるか、その判断は妥当だったか、暮らしの実感と合っているか。副議長という立場でも、一つひとつを丁寧に点検し続けてまいります。その点検にこそ、市民の皆さまの声が欠かせません。皆さまの日々の暮らしの中で感じる「気づき」や「想い」を、ぜひお聞かせください。