— 行財政改革の「今」と、その先にあるもの
12月定例会と令和6年度決算の審査が終わりました。
今回の議会では、行財政改革、受益者負担の適正化、決算認定、市立病院の予算など、市民の皆さまの暮らしに直結する重要な議論が交わされました。議会広報紙「かけはし」でも概要が掲載されていますが、ここでは副議長としての立場から、また一人の議員として市政を見つめてきた立場から、今回の議会で何が議論され、それが皆さまの暮らしにどうつながるのかをお伝えしたいと思います。

1.行財政改革 — 数字の変化と、変わらない本質
112.8億円から63億円へ — その意味を正しく捉える
「今後10年間で63億円の財源不足」。これが現在の財政見通しです。
昨年(令和6年)3月の時点では、「今後10年間で112.8億円の収支不足」でした。数字が大幅に改善したように見えますが、その主な要因は、令和7年2月にいただいた市民からの多額のご寄付(新病院整備を含む)によるものです。このご寄付により、財政悪化の時期が約2年後ろ倒しになったと試算されています。
つまり、時間的な猶予は生まれましたが、構造的な問題が解消されたわけではありません。63億円の財源不足は依然として存在し、改革の必要性は変わっていません。
家計に例えると、毎年の収入だけでは支出をまかなえず、年間6億円以上を貯金(財政調整基金)から取り崩さなければならない状態です。大きな臨時収入があったことで急場はしのげましたが、「毎月赤字」という体質自体は変わっていないということです。
議会としてどう向き合ってきたか
この問題に対して、市議会は段階的に取り組みを進めてきました。
令和6年12月定例会にて「財政の主要課題に関する調査特別委員会」を設置し、本市の財政運営における主要課題の整理と、中長期的な行財政改革の方向性を明らかにするための調査を行いました。12月には「宝塚市財政非常事態宣言の発令を求める決議」を全会一致で可決。これは議会として、会派の垣根を越えて財政状況への強い危機感を共有した瞬間でした。
特別委員会では、現状を数字だけで判断するのではなく、意思決定の在り方や事務事業の組み立て方そのものにも踏み込んだ議論が重ねられました。
「見直し」の限界が見えている
市は全591事業を対象に事務事業の見直しを行いましたが、令和7年度における取組効果見込額は約2.8億円にとどまっています。目標として掲げた10億円との間には大きな乖離があります。
私はかねてから、この問題を単なる「お金が足りない」という話ではなく、組織運営の仕組みに根ざした課題として捉えてきました。予防的な財政管理、社会変化に対応できるPDCAサイクル、スピード感ある意思決定 — これらの機能が十分に働いていないことが、今の状況を生んでいると考えています。
特別委員会の中間報告においても、「現行の延長線上の見直しだけでは限界があり、抜本的な改革が不可避である」という認識が議会全体で共有されました。これは一つの大きな前進です。
見えにくいリスクにも目を向ける
財政見通しに表れない「潜在的リスク」についても、特別委員会では議論が深められました。
物価高騰の影響は広範な分野に及んでいますが、財政見通しには十分に織り込まれていません。最低賃金の継続的な引き上げによる支出増も同様です。新ごみ処理施設の総事業費は、物価上昇に伴い当初の約468億円から約510億円へと増額されています。新病院建設や公共施設の老朽化による将来負担も、さらに増す恐れがあります。新ごみ処理施設と新病院建設を合わせると約900億円。これは宝塚市の一般会計予算(年間約900億円規模)にほぼ匹敵する規模です。また、12月定例会では市内施設の改修工事等で「入札不調」(事業者が集まらない、価格が折り合わない)が相次いで報告されました。建設業界全体の人手不足と資材高騰が、今後の大規模事業にも影響を及ぼすリスクがあります。
こうした不確実性を市民の皆さまと共有し、現状認識を一致させることが、改革への理解と協力を得るための第一歩だと考えています。
動き始めた改革
令和7年4月に森臨太郎新市長が就任され、財政非常事態宣言の発令は見送られましたが、事務事業の整理や財源の有効活用に向けた取り組みが進み始めています。具体的には、以下のような見直しが動き出しています。
◆ 高齢者バス・タクシー運賃助成の廃止(令和7年度末)
一般の高齢者への助成が終了し、障害をお持ちの方など特に支援が必要な方への助成に集中する方針です。近隣の伊丹市や川西市ではすでに同様の見直しが行われています。
◆ 蔵人共同浴場(ほっこり湯)の廃止(令和8年度末)
利用者の減少と施設の老朽化により、廃止が決定しました。
◆ その他の主な見直し
中学生学習理解度調査 → デジタルドリルへ転換 令和7年度末
エフエム宝塚への委託料を段階的に減額 令和8年度〜
市庁舎の開庁時間の短縮 令和8年1月
こうした取り組みの進捗と影響を丁寧に点検しながら、根拠やプロセスの透明性、説明責任の徹底、配慮を要する課題への対応を重視し、市民の皆さまにとって納得感のある行財政経営が行われるよう、議会としての責任を果たしてまいります。
2.令和6年度決算 — 2年連続の赤字が意味すること
数字の概要
令和6年度の一般会計決算は、歳入約1,189億円、歳出約1,174億円。歳入が大幅に増加していますが、これは新病院建設に関するご寄付(約245億円増)や地方交付税の増加(約15.4億円増)によるものです。
市のお金の出入りをもう少し身近に見てみると、こうなります。
入ってきたお金(歳入)
約1,189億円 うち市税 30.0%、国・県からの支出金 21.8%、地方交付税等 14.7%
使ったお金(歳出)
約1,174億円 うち福祉関係(民生費)37.9%、医療・衛生 28.5%、教育 8.8%
注目すべきは、実質単年度収支が2年連続でマイナスとなったことです。財政調整基金を11億円取り崩した結果、マイナス約4.2億円。表面的な収支は黒字に見えても、貯金を切り崩して何とか成り立っているという状態が続いています。
家計に例えると、「月々の収入だけでは生活費が足りず、毎月貯金を取り崩している」状態が2年続いているということです。さらに、収入の96.9%がすでに使い道の決まった固定費(人件費・社会保障費・借金返済など)で占められており、自由に使えるお金はわずか3.1%しかありません。
決算審査で浮かび上がった課題
決算特別委員会では、市制70周年記念事業の効果検証、事業見直しの進捗、特別支援教育の現状、放課後児童クラブの待機児童問題、ふるさと納税の影響など、多岐にわたる質疑が行われました。
特に印象深かったのは、委員会での討論で指摘された点です。「スクラップ・アンド・ビルドの観点が不十分」「事業撤退の基準がなく、どの程度うまくいかなければやめるという決定がされていない」「適切なスクラップがないため、価値のある新規事業が実現していない」 — これらは、私が2024年の議会質問で繰り返し提起してきた「組織の仕組みの問題」と通底する指摘です。
ふるさと納税の影響について
ふるさと納税では、宝塚市への寄付額が約2億6,500万円だった一方、宝塚市民が他の自治体へ寄付したことによる市民税の減少が約14億2千万円に上り、差し引きで大幅なマイナスとなっています。
身近な数字で考えると: 宝塚市に入ってくる寄付 → 約2.7億円 宝塚市から出ていく税収 → 約14.2億円 差し引き → 約11.5億円のマイナス (国の補填後でも約9千万円の減収)
制度がある以上は対応せざるを得ませんが、住民サービスへの影響を注視する必要があります。

3.受益者負担の適正化 — 市民生活と財政のバランス
毎日使う水道や下水道、道路といった社会基盤(インフラ)の現状と今後の計画が報告されました。
27の条例にわたる料金改定
今回の12月定例会で最も議論が白熱したテーマの一つが、受益者負担の適正化です。受益者負担適正化ガイドラインに基づき、27の条例に規定する手数料・使用料等を一括して改正する議案が提出されました。
「受益者負担」とは、行政サービスを利用する方に、そのサービスにかかるコストの一部を負担していただくという考え方です。例えば、住民票の発行手数料や、スポーツ施設・文化施設の利用料、駐車場料金などが対象となります。駐車場は「30分100円」から「20分100円」へと実質的に引き上げられ、夜間の無料時間も廃止されます。
私はこの議案を審査する特別委員会の委員として、審査に参加しました。
火葬場使用料をめぐる議論
審査の中で、特に丁寧な議論が求められたのが、市営火葬場の死産児に係る火葬場使用料についてです。この使用料を据え置くべきだとする修正案が提出され、委員会で活発な議論が交わされました。
財政の健全化を進める立場と、市民の心情に寄り添う立場。どちらも大切な視点です。修正案に賛成する側からは「ガイドライン自体の議論が十分でない段階で改定を進めるのは時期尚早」という意見が、反対する側からは「ガイドラインに基づく一律の算定で進めるべき」「料金ではなく別の仕組みで心情面の支援を検討すべき」という意見が出されました。
結果として修正案は否決され、原案が賛成多数で可決されましたが、この議論は決して無駄ではありませんでした。
附帯決議の重み
議案の可決にあわせて、全員一致で附帯決議が可決されました。その内容は「料金設定の妥当性の検証、影響評価、透明性の確保、説明責任を着実に講じること」を強く求めるものです。
物価上昇が続く中、市民生活の負担は増しています。とりわけ低所得層や子育て世帯にとっては、さらなる負担増につながる可能性があります。財政健全化は不可欠ですが、地域社会の活力を損なうことがあってはなりません。
「行革を進める」ことと「市民生活を守る」こと — この両立は、これからの宝塚市にとって最も重要な課題であり、議会として継続的に検証していく責任があると考えています。
4.12月定例会のその他の重要な議論
市立病院 —最先端医療
市立病院の予算が増額されました。主なものは、医療機器整備として5,500万円の増額。手術支援ロボット「ダビンチ」による最先端の手術が可能になることは、市民の皆さまにとって大きな前進です。
ダビンチとは、医師がモニターを見ながら精密なロボットアームを操作して行う手術システムです。従来の手術に比べて傷が小さく、患者さんの身体への負担が軽減されるメリットがあります。なお、リサーチの結果、254億円を寄付されたご夫妻がさらに4億円を追加寄付され、兵庫県内で初めて最新型の「ダビンチ5」が導入されたことがわかっています。
放課後児童クラブの待機児童
放課後児童クラブ(学童保育)で待機児童が発生している校区があります。待機が多い校区では、学校の中に空き教室がなく、外部で物件を探す必要がありますが、適した物件が見つからなかったり、家賃が高かったりすることが課題となっています。
現在、市では公共施設を含めた利用可能な施設の調査を進めており、駅前の施設の活用も検討対象に含まれています。また、学校の施設の使い方を工夫した新しい形での居場所づくりについても、教育委員会と協議が続けられています。
子どもたちの放課後の安全な居場所の確保は、子育て世帯にとって切実な問題です。「対話ひろば」でも市民の皆さまからご意見をいただいているテーマであり、引き続き注視してまいります。
特別支援学級の現状
特別支援学級の1クラスの上限は、国の基準で8人と定められています。以前は1クラス5〜6人で運営されることが多かったのですが、近年は7〜8人の学級が増えており、一人ひとりに合わせたきめ細かな支援が難しくなっている現状が報告されました。
林野の火災予防条例の改正
林野火災に関する注意報が新たに創設されました。1月から5月の乾燥期に注意報・警報を発令し、市ホームページ、安心メール、SNSで広報するとともに、警報時には消防車両による巡回広報も行われます。宝塚市は豊かな自然に恵まれたまちですが、それだけに林野火災への備えは欠かせません。
副議長として — この議会を振り返って
今回の議会を通じて改めて感じたのは、宝塚市が今まさに「選択の時」を迎えているということです。
63億円の財源不足。2年連続の赤字決算。受益者負担の見直し。これらは別々の問題ではなく、すべてつながっています。限られた財源の中で、何を守り、何を変えるのか。その選択には、市民の皆さまの理解と参画が不可欠です。
行財政改革は、数字を合わせることだけが目的ではありません。市民の皆さまが安心して暮らせるまちを、次の世代に引き継いでいくための土台づくりです。議会としても、改革の進捗を丁寧に点検し、市民の皆さまへの説明責任を果たしながら、一つひとつの施策が持続可能なまちづくりにつながっているか、しっかりと見守ってまいります。
「声を聴く」「現場を見る」「形にする」— 副議長としても、この姿勢を変えることなく、市民の皆さまとともに宝塚の未来を考え、行動してまいります。
皆さまの日々の暮らしの中で感じる「気づき」や「想い」を、ぜひお聞かせください。